保育所保育指針とは?改定のポイントや5領域・10の姿も解説
保育

2022年3月4日

保育所保育指針とは?改定のポイントや5領域・10の姿も解説

「保育所保育指針」とは、厚生労働省が定める保育の定義、ねらい、基本方針をまとめたものです。最近では、共働き家庭の増加によって保育所の利用者が急増しており、これから子どもを保育所に入所させようとしている人や、保育士を目指している人も多いのではないでしょうか。そこで知っておきたいのが、保育の基本がまとめられた「保育所保育指針」です。

本記事では、保育所保育指針の内容を知りたい人のために示されている内容や、2018年の改定ポイントについて解説します。この記事を読むことで「現代に求められている保育の姿」も理解できるでしょう。

 


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1. 保育所保育指針とは?




保育所保育方針とは、「保育園の基本的な考え方(ねらい)と保育内容」が定義された、全保育所が守るべき保育の基本方針のことです。保育所保育指針は、1965年に厚生労働省によって制定され、時代の変化に合わせて数度の改定を繰り返してきました。

保育所には、各所によってさまざまな特色や運営方針がありますが、子どもの安全や健全な発育のためには、国としてある一定の保育基準、方向性の整理が必要です。そこで国が全保育所に対し、その基準を定めたものが「保育所保育方針」です。

保育所保育方針で示された事項には、「①遵守すべき事項」「②努力義務が課される事項」「③基本原則」の3段階があり、「①遵守すべき事項」以外は、保育所によって方針や保育内容が変わってくることがあります。

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2. 保育所保育指針の5つの領域




保育所保育方針では、子どもの発達に必要な領域を5つに区分し、「育みたい力(ねらい)」と「その力を養うために必要なこと(内容)」を定めています。

● 健康
● 人間関係
● 環境
● 言葉
● 表現

保育所保育指針では、子どもの発達状況に応じた保育を行うため、子どもを「1歳以上3歳未満(乳幼児)」と「3歳以上」に区分しており、上記5つの領域は「3歳以上」の子どもへの保育指針をまとめたものとなります。この5つの領域におけるそれぞれのねらいと、そのためにやるべき内容について、説明します。

■健康


「健康」領域では、子どもの心身の発育と、それにより生活力を身に付けていくことを目的としています。


  < ねらい >
 ● 明るく生活し、身体を動かすことを楽しむ
 ● 身体を十分に動かし、さまざまな動きをするようになる
 ● 安全な生活に必要な習慣・ルールに気付き、実践しようとする


生活力とは、子どもが自立し、排せつや着替えなどができるようになることを指します。これらは、遊びによって子どもが身体を動かすのを促す他、保育所での生活リズムが習慣付いていくことで形成されていきます。

■人間関係


「人間関係」領域の目的は、子どもが保育所生活を通じて、人との関わり合いを深めていくことです。


  < ねらい >
 ● 保育所の生活を楽しみ、周囲の子どもとの関わりを楽しめるようになる
 ● 周囲の子どもへ興味を持ち、自ら関わりを持とうとする
 ● 保育所の生活の決まりに気付く


保育所では、子どもが遊びや生活を通じて、時には保育士の仲立ちを得ながら、徐々に周囲の子どもに対する興味を深めていきます。良い関係性を築けるようにサポートし、他者と過ごすことを「楽しい」「心地良い」と感じられるだけではなく、相手の感情やルールがあることを学んでいくように導いていきます。

■環境


「環境」領域では、身近な環境との関わりの中で子どもが興味・関心を持ち、自ら探求する意欲を自分の生活に取り入れていく力を養うことを目的としています。


  < ねらい >
 ● 身近な環境に触れ合い、興味や関心を持つ
 ● 発見を楽しんだり、考えたりしようとする
 ● 見る、聞く、触るなどの経験を通じて、感覚の働きを豊かにする


保育士は、上記のねらいを達成するため、子どもがより外の環境へ興味を向けるように働きかけていきます。具体例としては、遊び道具を用いて「こうするとどうなるのか」といった子どもの興味を引き出したり、周囲の生き物、近隣の生活、季節の行事など外界の環境に触れる機会を与えたりといったことが挙げられます。

■言葉


「言葉」の領域は、子どもが言葉を覚えるだけではなく、自分の気持ちを表現する楽しさ、姿勢を身に付けていくことを目的としています。


  < ねらい >
 ● 言葉遊びや、言葉で表現する楽しさを学ぶ
 ● 人の言葉や話などを聞き、自分の気持ちや想いを伝えようとする
 ● 言葉のやり取りを通じて身近な人と気持ちを通わせる


保育士は、子どものコミュニケーション力を伸ばしていくために、子どもの言葉に温かく耳を傾けたり、絵本や物語の読み聞かせを行ったりすることを通して、言葉によって感情を伝える方法を教えていきます。

■表現


「表現」領域では、子どもが表現することにより、豊かな感性や創造性を育むことを目的としています。


  < ねらい >
 ● 身体の感覚の経験を重ね、さまざまな豊かな感覚を味わう
 ● 感じたことや考えたことを自分なりに表現しようとする
 ● 生活や遊びのさまざまな体験を通じて、イメージや感性を豊かにする


子どもの表現力を育てるためにまず必要なのは、子どもが外界の素材や音楽に触れることです。保育士は、子どもの新たな発見や感動に共感し、子どもの感性が育つように導いていきます。他にも、歌、ダンス、手遊びなどを通じて、子どもが表現を楽しむことを後押しし、伸ばしていくことも重要です。

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3. 保育所保育指針の乳幼児保育の3つの視点




続いて、「1歳以上3歳未満(乳幼児)」を見てきましょう。この時期には、身体的、精神的、社会的な発育を促し、「3歳以上」の5つの領域の発育の基盤を作るようになっています。

急激に成長する時期ではありますが、子どもによって個人差も大きく、まだ「教育」ではなく「養護」の側面が強い時期です。近年、共働き家庭の急増により、乳幼児期から保育所に通う子どもが増えてきました。保育所に求められる重要な役割でもあるので、詳しく見ていきましょう。

■身体的発達に関する視点


身体的発達に関する視点では、「健やかに伸び伸びと育つ」として、「3歳以上」の5つの領域にある「健康」の基盤を作っていきます。


  < ねらい >
 ● 身体感覚が育ち、快適な環境に心地を感じる
 ● 伸び伸びと体を動かし、這う、歩くなどの運動をしようとする
 ● 食事、睡眠等の生活リズムの感覚が芽生える


この時期の子どもは、最初は自身と外界の区別があまりついていない状態です。それを子どもが元気良く身体を動かし、這ったり、物を触ったりする中で、徐々に周囲の環境への興味を示すように温かく見守っていきます。また、この時期に、「お腹がすいた」「眠い」などといった生理的な欲求を、保育士等によって愛情豊かに満たしていくことが、子どもの心の安定感にとって重要です。

■社会的発達に関する視点


社会的発達に関する視点では、「身近な人と気持ちが通じ合う」として、身近な大人との関わり、信頼関係を深めていきます。


  < ねらい >
 ● 安心できる関係の下で、身近な人と共に過ごす喜びを感じる
 ● 体の動き、表情、発声等により、保育士等と気持ちを通わせようとする
 ● 身近な人と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感が芽生える


子どもの社会性を育んでいくために、この時期に特に重要なのは、大人からの愛情を受けることです。「周囲の大人から愛され、受け入れられている」と、子ども自身が実感することで、コミュニケーションの土台を形成していきます。

■精神的発達に関する視点


精神的発達に関する視点では、「身近な物と関わり、感性が育つ」として、子どもが外界の物に触れることで感性(感覚)を磨いていきます。


  < ねらい >
 ● 身の回りの物に親しみ、さまざまな物に興味や関心を持つ
 ● 見る、触れる、探索するなど、身近な環境に自分から関わろうとする
 ● 身体の感覚による認識が豊かになり、表情、手足、体の動き等で表現する


この年齢では、さまざまな玩具、生活用品、自然などに触れることが、子どものその後の感性(感覚の発達)につながります。子どもの好奇心を最大限に引き出せるように、絵本や玩具を使いながら導いていきます。

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4. 2018年に改定された保育所保育指針のポイント




保育所保育指針は、1965年に制定されて以降、時代の変化に応じて改定されてきました。現行の指針は、共働き世代の増加など社会状況の変化を背景として2018年に改定されたものです。これら社会状況の変化を受け、改定されたポイントには、以下の5つが挙げられます。

 1. 保育所を「幼児教育を行う施設」と位置付けた
 2. 0~3歳未満児の保育について具体的に示された
 3. アレルギーや災害対策など、子どもの安全面への記載が追加された
 4. 子育て支援への積極性が盛り込まれた
 5. 研修実施など全ての職員のスキルアップ目標が掲げられた

改定内容について、それぞれ詳しく説明します。

■保育所を「幼児教育を行う施設」と位置付け


これまでの保育所の役割は、「仕事の忙しい保護者に代わって、子どもを養護する場所である」と認識されがちでした。しかし、この改定により、「保育所とは、養護だけではなく、幼児教育を行う施設である」と明確に定義されました。

 ● 養護…危険がないように保護し育てること
 ● 教育…教え育てること。望ましい知識、技能、規範などの学習を促進する意図的な働きかけの諸活動(広辞苑参照)

保育所は、小学校教育の前段階であり、学習能力の基盤を作る大事な時期でもあります。コミュニケーション力、社会性、イメージし表現する力などを「教育」していくことで、次のステップである小学校教育へとつなげていく重要な役割を果たしています。

■0歳~3歳未満児の保育


これまでの指針では、「3歳児以上」の保育についての記載が中心でしたが、改定により「0歳~3歳児未満」の保育についての記載が充実しました。この背景には、共働き家庭の増加による3歳未満の乳幼児の利用が増えたことが挙げられます。

■子どもの健康や安全面


アレルギー疾患を有する子どもの事故防止と災害発生時の対応について、新たな項目が追加されました。これらは、実際に保育所で起きた事故や、東日本大震災などの災害経験が背景にあります。

食物アレルギー対応については、対象食品を完全除去するよう保育所全体で組織的に取り組むこと、災害発生時の対応については、災害対策のマニュアルを完備し定期的に避難訓練を行うことなどが明記されています。

■子育て支援の重要性


以前は、「保護者に対する支援」だったものが「子育て支援」に改定されました。その意味合いとしては、「子育ては保護者がするもの」という考えではなく、子育て支援に携わる他の機関とも連携し、「地域全体で子育てを支援していきましょう」ということです。以前から日本では、子どもは地域の大人の目がある中で育っていましたが、近年は近隣住民とのつながりが希薄化し、「保護者が子どもを見る」といった負担が増えています。一方で、女性の社会進出や共働き家庭が増加しており、今後は、より一層、社会全体で子育てをサポートしていくことが求められています。

■職員の研修などに関して


保育所の機能・役割が増え、課題が複雑化していることを受け、保育士だけではなく、「保育所全職員のキャリアアップ」を組織的に目指す必要性が示されました。この必要性は、以前から叫ばれており、2017年には、厚生労働省から「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」が先んじて策定されていました。つまり、これが保育所保育指針改正にも反映されたという形になります。今後は、より一層、保育所全体のキャリア形成が推進され、子どもが安全で豊かに育つ環境になっていくことが期待されています。

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5. 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)に関して




保育所保育指針では、保育所が乳幼児の教育の現場であるとして、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」を掲げています。子どもがこの「10の姿」に向かって育っていけるよう、保育士には以前にも増し、教育者としての役割が求められるようになっています。以下、「10の姿」の内容を説明します。

■健康な心と体


子どもが心身共に健康で、生活力を培い、安全への意識に気付くことを指しています。保育所の役割は、子どもが体を動かす楽しさを学び、それによって自分でできること(自立性)を増やすように導いていくことです。具体的には、衣服の着脱、食事、排せつなど、子どもが自分でできたことを褒めて伸ばすことで「生活力」を養う他、子どもが体を動かす中で「こうすると危ない」という「安全への意識」を培っていくことなどが挙げられます。

■自立心


自立心とは、子どもが自ら「やってみよう」と、行動する姿勢のことを指します。これは、保育士との対話の中から興味を持ち、実際にできたことを褒めてもらったり、受け入れてもらったりした結果、子どもが達成感を感じることで養われていきます。

■協同性


協同性とは、子どもが他者(周囲の子ども)と協力し、共に達成するという姿勢のことを指します。例えば、他の子どもと協力して工作物を完成させたり、お遊戯会を成功させたりといったことです。それには、保育所で他の子どもと関わり合う中、相手の感情に気付き共感する力や、自分の考えを相手に分かるように伝えるコミュニケーション力も必要とされます。

■道徳性・規範意識の芽生え


道徳性・規範意識の芽生えとは、他者との折り合いをつけることや、ルールを守ろうとする姿勢のことです。保育所生活では、玩具の取り合いなどのいざこざが、日常的に起きます。その際に、子ども自身が自分の行動を抑えたり、自分の行動を振り返り、「悪い」と思った点を謝ったり、道徳心を身に付けるように導いていきます。

■社会生活との関わり


社会生活との関わりとは、子どもが自ら率先して、他者や社会と関わっていこうとする姿勢(社交性)のことを指します。子どもは、乳児の段階では、自分と外界の区別が曖昧で、そこから徐々に他者を認識し始め、保育士、友人、地域の人との世界を広げていきます。保育所では、外を散歩したり、地域イベントに参加したりすることで、子どもの世界の広がりを助けています。それにより、子どもが他者への親しみを持ち、自分が誰かの役に立つ喜びを学んでいけることを目指していきます。

■思考力の芽生え


思考力とは、その言葉通り、子どもが物事を自ら考える力のことです。思考力の芽生えとは、例えば、遊びを通じて、子ども自身が「もっとこうしたらどうだろう」「こうすればうまくいくのでは」といった気付き、想像力、工夫する力を育むことを指します。これは、保育士からの語り掛けなどを通じて、徐々に伸ばしていくことができます。

■自然との関わり・生命尊重


自然との関わり・生命尊重とは、子どもが自然と接する中で、自然への畏敬の念を持ったり、命をいたわったりする姿勢のことです。保育所では、子どもが動物に触れたり、栽培を経験したりする機会を設けている所もあります。これら動植物との関わりの経験を通じて、子どもの生命に対する感謝の気持ち、親しみ、愛着を育んでいきます。

■数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚


数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚とは、生活の中にある「数字」「文字」「標識」などに子どもが興味を持つようになることです。保育所でこれらに多く触れておくことで、小学校に上がった際にスムーズな学習につなげていくのがねらいです。日頃の保育所での生活の中で、絵本や遊びなどを通して、子どもが楽しみながら学んでいけるように導いていきます。

■言葉による伝え合い


言葉による伝え合いとは、「他者との対話」「コミュニケーション力」のことを指します。絵本や保育士との対話の中で、感情を言葉で分かりやすく伝えることを身に付けていきます。このため、保育士が愛情を持って、子どもの言葉に耳を傾けてあげることが大切です。

■豊かな感性と表現


豊かな感性と表現とは、表現する喜びを知り、意欲的に表現することで、自己の創造性を発揮する姿勢のことです。例えば、工作で思い思いの創意工夫をしたり、お遊戯会でダンスや音など表現を楽しんだりすることです。率先して人前で披露し、それぞれの子どもの「色」を引き出していくことが求められます。

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6. 保育所保育指針のまとめ




保育所保育指針とは、保育の定義、ねらい、基本方針をまとめたものです。共働き家庭の増加や、東日本大震災の経験による防災意識の高まりなど、現代の時代背景を反映する形で2018年に改訂されました。この保育所保育指針を読むことで、子どもの発育のために必要な関わり方だけではなく、現代の保育に求められている役割も分かります。実際に子育てや保育に携わる人は、困ったときに読み返してみると、きっと手助けになることでしょう。



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この記事を書いた人

セントスタッフ株式会社
デジタルマーケティング部
中村璃奈

求人あるあるの求人作成・記事執筆を担当。保育士。 保育士として保育園で8年間勤務。大手から小規模まで様々な保育園で勤務経験あり。

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