待機児童問題の原因は保育士不足?現状についてや解決のための対策を解説
保育

2022年5月24日

待機児童問題の原因は保育士不足?現状についてや解決のための対策を解説


日本が抱える社会問題の一つとして、「待機児童問題」があります。
保育士として働く方や、これから子どもの保育施設を探す保護者の関心も高いのではないでしょうか。
待機児童問題は、安心して子育てをするためにも、解決したい社会問題です。
この記事では待機児童問題とは何なのか、原因や解決策、解決事例までまとめてご紹介します。

 

お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


1. 待機児童問題とは



待機児童とは保育施設への入所条件を満たしており、入所申請をしているにもかかわらず、利用ができていない未就学児のこと。
女性の社会進出や核家族化、保育士不足が主な原因とされており、特に都市部での待機児童問題は深刻化しています。
国は待機児童問題解決の施策として、「エンゼルプラン」や「新待機児童ゼロ作戦」などを行いました。
その結果、厚生労働省が発表している待機児童の人数は2021年4月時点で5,634人と、2017年の26,081人からわずか4年間で20,447人減少し、約5分の1にまで減少しています。
ただし、保護者が育休中や求職活動を休止していたり、特定の保育施設のみを希望していたりする隠れ待機児童は含まれていません。
(出典:待機児童数調査のポイント



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


2. .待機児童問題の原因


待機児童問題の主な原因を3つご紹介します。

■長引く経済不況と女性の社会進出による共働き世帯の増加


女性の社会進出による共働き世帯の増加は、待機児童問題の原因の一つです。
厚生労働省のデータを見ると、2013~2018年までの過去6年間だけでも女性の就業率は約67%から約74%に上昇しています。
これは、社会の変化や長引く経済不況の影響を受けて、出産後も子育てをしながら働き続ける女性が増えたことで共働き世帯が多くなったため、保育園のニーズが増加したと考えられます。
しかし、保育施設の受け入れ人数には限りがあることから、結果として保育施設への入所条件を満たしていても入園できない、待機児童が増えてしまったのです。
(出典:男女共同参画白書<概要版>平成30年版 / 内閣府男女共同参画局

■保育士が不足している


待機児童問題の原因には保育士不足も挙げられます。
保育需要が増加する一方で、離職率の高さや、また責任の重さ、事故への不安などから保育士の確保が追いつかないのが現状です。
さらに、若年層が都市部に出てしまい過疎化が進んでいるような場合は、自治体での保育士の確保も大きな課題となっています。
保育施設を増やしても働く保育士が足りなければ子どもを見ることができないため、保育士の不足は待機児童問題に大きく関係していると言えるでしょう。
(出典:保育人材確保のための 『魅力ある職場づくり』に向けて

■そもそも保育園が不足している


仕事環境や生活環境が整っている都市部に人口が集中するため、都市部では保育園不足が続いています。
一方、児童が少ない地方の過疎地域でも保育園が減少し、入りにくくなっているのが現状です。
また、新たに保育園を作ろうとしても、保育士不足や周辺住民からの理解が得られず作れないといった問題もあります。



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


3. 待機児童問題はなぜ解決しない?



待機児童数調査のポイント」によると、全国的に待機児童数は減少傾向にありますが、未だ解決には至っていません。
ここでは、待機児童問題が解決しない原因を詳しくご紹介します。

■隠れ待機児童の存在


待機児童問題が解決しない原因として、「隠れ待機児童」の問題があります。
隠れ待機児童とは、国や自治体から待機児童として数えられていない子どものことです。
待機児童として数えられない理由は、保護者が育休中や求職活動を中止している場合であったり、特定の保育施設のみを希望していたりするなどとされています。
このような隠れ待機児童の数を正確に把握できなければ、待機児童問題の解決は難しいでしょう。

■1~2歳児向けの保育環境の整備が追い付いていない


1~2歳児向けの保育施設が不足していることも、待機児童問題が解決しない原因の一つです。
実際に、2020年度の待機児童全体の人数が12,439人(全国・全年齢)であるのに対して、1~2歳児は9,603人となっており、全体の約77%を占めています。
2015年にスタートした「子ども・子育て支援新制度」の中で、0~2歳児向けの保育を中心とした地域型保育事業が展開されましたが、定員数が19名以下などの規定があることから整備が追い付いていません。
(出典:保育所等関連状況取りまとめ



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


4. 待機児童問題の現状




ここでは、待機児童問題の現状をお伝えします。

■待機児童の人数の推移


待機児童数調査のポイントによると、2016~2021年の待機児童数は下記の通りです。

待機児童数
西暦 4月1日時点 増減数
2016(平成28)年 23,553人
2017(平成29)年 26,081人 +2,528人
2018(平成30)年 19,895人 ▲6,186人
2019(平成31/令和元年) 16,772人 ▲3,123人
2020(令和2)年 12,439人 ▲4,333人
2021(令和3)年 5,634人 ▲6,805人

2017年のピークと2021年を比べると20,447人も減少しており、待機児童数は約5分の1に減っていることがわかります。
しかし、上記の人数には隠れ待機児童が含まれていないことから、引き続き問題の解決への取り組みが必要です。
(出典:待機児童数調査のポイント

■1~2歳児の待機児童が多い


2020年4月1時点の待機児童数12,439人を、年齢別の分類は下記の通りです。

年齢 待機児童数(待機児童率)
0歳児 1,227人(9.9%)
1~2歳児 9,603人(77.2%)
3歳以上児 1,609人(12.9%)

待機児童数のうち、1~2歳児の割合が77.2%となっており、保育環境の整備が追い付いていないことがわかります。
原則として、育児休業の期間は「子どもが生まれてから1歳になる誕生日の前日まで」と法律で定められていることや、1歳頃の卒乳を機に仕事を始めたいと考える家庭も多いことが関係しているでしょう。
子育て支援の充実を図るためにも、1~2歳児向けの保育施設の増加が必要とされています。
(出典:保育所等関連状況取りまとめ

■地域別の待機児童の問題


待機児童数は、地域によって大きな差があります。
厚生労働省が発表している「21/4/1 全国待機児童マップ」で、待機児童が多い都道府県ワースト5をご紹介します。

1. 東京都 2,343人 (待機児童率0.73%)
2. 兵庫県 1,528人 (待機児童率1.31%)
3. 沖縄県 1,365人 (待機児童率2.19%)
4. 福岡県 1,189人 (待機児童率0.94%)
5. 埼玉県 1,083人 (待機児童率0.80%)
特に、人口が集中する都市部を中心に待機児童の数が多い傾向にあります。
沖縄県の場合、保育施設の整備遅れや保育士不足などから、他県に比べて待機児童数が多くなっているようです。
(出典:21/4/1 全国待機児童マップ

■新型コロナウイルス感染拡大による影響


待機児童数の大幅な減少には、新型コロナウイルスの影響もあるとされています。
2021年の待機児童数は、2017年のピーク時に比べて約5分の1に減少しましたが、待機児童解消を目指した取り組み以外にも、「新型コロナウイルスの感染への不安」から保育所の利用を控える保護者が相次いだことが要因ではないかと考えられています。
実際、保育所利用の申込数は、2021年4月の時点で282万8,166人と、2020年4月より1万4,042人減っており、集計を始めた2009年以降で初めて減少しました。
このことから、厚生労働省も「新型コロナウイルスの感染への不安から保育所の利用を控えた保護者が多かった」と発表しています。



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


5. 待機児童問題を解決するための対策とは




ここでは、待機児童問題の現状をふまえて、解決策や対策についてご説明します。

■保育士の育成体制の整備


保育士の離職率改善や保育士数を確保するために、育成体制の整備が重要視されています。
そのため、政府は保育士の待遇向上と専門性強化を目的として、「保育士のキャリアアップ制度」を導入しました。
経験年数や役職などの要件を満たした保育士が研修を受講することで、補助金や昇給などが受けられる仕組みです。
ただし、「仏教の教えを重んじた活動」「英語を取り入れた活動」など、園によって保育方針が異なるため、保育士の育成方法にも違いがあります。
政府の施策である「保育士のキャリアアップ制度」だけでなく、各園の保育方針に沿った保育士の育成体制を整える必要があるでしょう。

■潜在保育士の復職の支援


潜在保育士とは、資格を保有しながらも保育現場で働いていない方のことです。
厚生労働省の調査では、潜在保育士は約76万人いることがわかっています。
この人材を支援し、現場に呼び戻すことが保育士不足の解決につながると考えられています。
潜在保育士への具体的な支援としては、相談窓口を設けて就職の斡旋を行なったり、復帰への不安をもつ潜在保育士のために実技講習を行なったりすることなどが考えられるでしょう。
他にも、保育士向けの求人に「ブランクOK」「復職を応援します」など、潜在保育士が安心して復職できるようなキャッチコピーを記載するのも一つの方法です。

■働く保育園の環境改善


保育士が働く保育園の環境改善も、人材の確保や離職率低下につながるでしょう。
たとえば、仕事量の多さから休日も業務をすることになり、プライベートとのバランスが取れず離職してしまうケースも少なくありません。
このような事態を減らすために、ICTシステムを導入し、業務量を軽減する工夫が注目されています。
ICTシステムとは、タブレットやパソコンを活用して情報やコミュニケーションを行うシステムツールで、下記のような作業が可能です。

● 園児の家族構成、アレルギーなど基本情報の管理
● 指導計画や保育日誌の作成
● 出欠・遅刻・早退・延長などの連絡
● 職員のシフト管理
● 保護者や自治体への提出書類の作成
保護者に向けて必要な情報を一斉送信できる機能も搭載されています。
ICTシステムの導入は政府が補助金制度を設けているため、活用しやすいでしょう。

■保育士の待遇改善


日本政府が公表している「平成27年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の月額給与は20万3,000円となっており、全産業の平均月額給与30万4,000円と比べると約10万円も低い金額です。
政府は保育士の処遇改善に向けて、役職に応じた昇給制度を確立していますが、制度の活用には「経験年数3年以上」や「研修への参加」などさまざまな条件があります。
経験年数が1、2年の保育士や多忙で研修に参加できない保育士は昇給制度を活用することが難しいため、園独自の対策も必要となるでしょう。
園独自の昇給制度があることで仕事に対してのモチベーションアップとなり、人材の確保や離職率の低下にも役立つでしょう。

■その他の対策


上記の対策以外にも、保育士不足の解決に向けて実行されている対策は下記の通りです。

● 保育士試験の実施を年2回
● 保育士の勤続年数や経験年数に対する処遇改善の実施
● 保育士試験受験への学習費用の支援
● 指定保育士養成施設で実施する、学生に対する保育所への就職促進支援
● 福祉系国家資格保有者に対しての保育士試験科目などの一部免除の検討

このように、保育士を目指す人材への支援や現役保育士の待遇改善、潜在保育士が復職しやすいような支援をすることが、保育士数の確保や待機児童問題の解決につながると考えられています。



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!
無料会員登録はこちら
無料お仕事相談はこちら


6. 待機児童問題が解決した事例




杉並区では2016年に、2017年4月の保育所入所待機児童が560名を超えることが見込まれたため、「すぎなみ保育緊急事態」を宣言しました。
「待機児童解消緊急対策」として、区立公園を含む既存の区立施設などを活用し、私立認可保育所として整備を行なったことで、2018年度の待機児童を大幅に減らすことができました。
また、港区でも2017年に待機児童問題の一環として保育定員の拡大に取り組んだ結果、待機児童がゼロになっています。
このように、自治体が率先して住民の理解を得ながら、待機児童問題の解決に向けて取り組んでいく必要があるでしょう。


7. まとめ




待機児童とは、保育施設への入所条件を満たし入所申請をしているにもかかわらず、利用ができていない未就学児のことで、特に都市部での待機児童問題が深刻です。
待機児童問題の解決に向けて、保育士の待遇改善や働く環境の改善など、さまざまな取り組みが進められています。
子育て世帯の負担を減らし、少子化を加速させないためにも、「待機児童問題」は早期解決が迫られている社会問題だということを、私たちは理解しなければならないでしょう。



  お仕事をお探しの方に無料で求人をご紹介!


●雇用形態から保育の求人を探す
正社員の求人はこちら
パートの求人はこちら
契約社員の求人はこちら

●職種から保育の求人を探す
保育士
幼稚園教諭
児童発達支援管理責任者
児童指導員
管理栄養士/栄養士
保育補助
事務職
調理師/調理スタッフ
管理職/管理職候補
その他

●人気のエリアから保育の求人を探す
北海道
宮城県
埼玉県
東京都
千葉県
神奈川県
愛知県
大阪府
京都府
兵庫県
広島県
福岡県

●人気の検索条件から保育の仕事を探す
土日休み
年間休日120日以上
駅近(5分以内)
小規模

この記事を書いた人

セントスタッフ株式会社
デジタルマーケティング部
中村璃奈

求人あるあるの求人作成・記事執筆を担当。保育士。 保育士として保育園で8年間勤務。大手から小規模まで様々な保育園で勤務経験あり。

最新おすすめ求人

関連記事